旅行会社:オーダーメイドの相談から、当日中の見積提案まで
オーダーメイドの相談は、担当者が見積を組む速度を超えて届きます。問い合わせの受付、仕入先とのメール、提案書の作成を1つのKylonルームで扱い、行程と価格は担当者が決める運用を整理します。
オーダーメイドが前提になり、手作業では追いつかなくなった
成約している旅行は、1年前より規模が大きく、単価が高く、要望が具体的になっています。WeTravelの2026年レポートは旅行者130万人、予約80万件、旅程35万件の集計データに基づき、平均総額が前年比59%上昇、56%の事業者がプライベート・オーダーメイド旅行への関心の高まりを報告したとしています。調査対象の旅行アドバイザーのうち72%が、オーダーメイドまたはプライベート旅行を最も依頼の多い商品の1つに挙げています(出典:WeTravel「Travel Trends Annual Report 2026」、2026年9月21日参照)。
人数も同じ方向に動いています。同じデータでは、旅行会社・アドバイザー経由の予約は2025年の平均2.6名から2026年は3.0名になりました(出典:WeTravel「Travel Trends Annual Report 2026」、2026年9月21日参照)。1件あたりの人数が増えるほど、希望条件、部屋割りの組み合わせ、支払前の合意事項が増えます。
需要側に問題はありません。ASTAの資料では、旅行会社経由の販売額は2026年に旅行市場全体の26%、1,413億ドル規模に達する見込みとされ、30%のアドバイザーが顧客の半数以上は初めて旅行会社を利用する人だと回答しています(出典:ASTAプレスキット、2026年9月21日参照)。初めての顧客は質問が多く、文章での説明を必要とします。制約になるのは、相談が届いてから価格入りの行程表が顧客の受信箱に届くまでの時間です。
旅程ごとに1ルーム、パイプラインに1つのレコード
旅程管理用のKylonルームを1つ、その裏にデータベースアプリを1つ置きます。相談は1件ずつレコードになります。人数、日程、予算帯、目的地、旅行の趣向、移動や食事の配慮事項、打診した仕入先、各社の回答、提案の進捗です。
要点は管理台帳そのものではありません。レコードがAIエージェントと担当者の双方が読める形で書かれているため、仕入先からの返信が担当者の受信箱で月曜まで待たずに、旅程の側を更新することです。
- 旅程レコード:要望、人数、制約条件を文章ではなく項目として保持
- 仕入先見積行:何を依頼し、何が返ってきたかを旅程に紐づけて保持
- ルームガイドライン:文体、約束してよい範囲、人が価格を決める範囲を明文化
- 1つのパイプラインビュー:相談、見積、提案送付、入金、出発までを一覧
届くもの、整えられるもの、人が決めるもの
このページの原則は他のKylonのページと同じです。AIエージェントが整え、人が確定します。旅行業ではこの線がとりわけ重要です。確定した内容は契約であり、利幅も限られているためです。
| 届くもの | 手元に整えられるもの | 人が決めること |
|---|---|---|
| 自由記述のウェブ問い合わせ | 人数、日程、予算帯を構造化した旅程レコードと、記載のない不足事項3点 | 相談を受けるかどうか、折り返しで確認する内容 |
| 過去に手配経験のある地域の要望 | 過去の旅程と仕入先メモから起こした行程の一次案 | 実際の行程、日程配分、代替案 |
| 6社に同じ空き状況を照会する必要がある | 日程、人数、特記事項を揃えた6通のメール下書き | どの仕入先に打診するか、送信の可否 |
| 4日間にわたり4種類の形式で見積が届く | 旅程レコードに対する比較表。各見積の含有範囲と除外範囲を明示 | 採用する見積と利幅 |
| 顧客への提案段階に入る | 採用見積と承認済み行程から作成した提案書の下書き | 送信前のすべての価格と含有条件 |
| 出発90日前 | 手付金、旅券、保険、最終部屋割り、残金の状況を並べたチェックリスト | 督促する内容と、担当者が直接対応する内容 |
仕入先とのメールが、業務の大半を占める
ホテル3軒、送迎2件、ガイド1名、レストラン手配を含むオーダーメイド旅行は、同じ日程と同じ人数を保ったまま進める7本の会話です。同じ情報を7回打ち直す運用では、6名の旅程が確認書の中で5名になり、到着するまで誰も気づかないという事態が起こります。
ルーム内では、AIエージェントが旅程レコードから各社への依頼文を作成するため、7通すべてで人数、日程、要件が揃います。返信が届くと見積を読み取り、数値を旅程レコードに書き込み、読み取れなかった箇所は推測せずに明示します。担当者は7本のスレッドではなく1つの比較表を見ます。
これらは担当者の確認なしには送信されません。仕入先との関係は事業の資産であり、内容の誤った依頼は遅い依頼より損失が大きいためです。
運用画面
担当者が一行で組み合わせを指示すると、レコード上の見積から提案書が組み立てられ、送信するまで承認待ちの状態で止まります。
提案書が商品である以上、最後の一版は担当者が書く
定型文に見える提案書は、話を聞いてもらえたと感じる提案書に負けます。AIエージェントは構成、確定済みの含有条件、価格をレコードから組み立てます。担当者は、2本隣の通りにある安いホテルではなくこのホテルを選んだ理由を書きます。
この役割分担は調査データとも整合します。アドバイザーの66%が、AIは業務の効率と発想の面で支えになると回答しており、顧客が対価を払っている判断そのものを置き換えるものとは位置づけていません(出典:WeTravel「Travel Trends Annual Report 2026」、2026年9月21日参照)。
入金後、忘れられやすい区間
旅行業のシステムは販売までは充実していても、その後が手薄になりがちです。信用に影響が出るのは手付金から出発までの区間です。残存有効期間が6か月を切った旅券、誰も確認していない最終部屋割り、仕入先の取消期限まで残る未入金などが該当します。
各旅程レコードが日付付きのチェックリストを持つため、ルームは項目ごとの予定に沿って通知を出し、それに対応する顧客向け文面を作成します。担当者は、送信するものと電話で伝えるものを判断します。3週間後に出発する家族旅行であれば、多くの場合は電話です。
接続するもの
Kylonは予約エンジンでもGDSでも予約管理システムでもありません。旅行会社がすでに使っているツールの上に立ち、相談、仕入先、顧客の間の調整を担います。
- メール:仕入先と顧客のやりとりが担当者個人ではなく旅程に紐づく
- データベースアプリ:旅程と見積のレコードをチームとAIエージェントが同じ形で読む
- ファイル保管:見積書、バウチャー、署名済み提案書の保管
- ルームガイドライン:約束してよい範囲と、人が価格を決める範囲の明文化
- 権限設定:AIエージェントが担当する旅程の範囲を限定する
相談の多くがメールで届く場合、受信の設計はメール起点の営業パイプラインと同じ形になります。宿泊・旅行分野の他の事例は宿泊・旅行のユースケースをご覧ください。
着手の順序
取扱いの多い目的地を1つ選びます。その旅程項目と仕入先リストをデータベースアプリに入れ、相談がすでに届いているメールボックスに接続し、重要な1つのルールを書き出します。AIエージェントは仕入先への依頼文と提案書を作成してよい、送信は担当者が行う。
“行程を設計するのは担当者のままです。変わったのは、7通目の仕入先メールが1通目と同じ内容になったことです。”


